時短勤務で仕事と家族の時間を両立|給与は?いつまでできる?

時短勤務で仕事と家族の時間を両立|給与は?いつまでできる?

働きたいものの、子育てや介護との両立にお悩みの方はいらっしゃらないでしょうか。
そこで活用を検討したい働き方が、時短勤務です。時短勤務は1日6時間勤務を原則とする働き方で、1日の労働時間を短縮できる分、仕事と育児・介護との両立がしやすくなります。ただ、給料の減少やキャリアへの影響など、デメリットがあることに不安を感じている方もいるかもしれません。
今回は、時短勤務の意味やメリット・デメリット、さらに時短勤務以外に家族との時間を確保して働くために役立つ制度について解説します。

時短勤務とは、1日6時間勤務を原則とする働き方

時短勤務はどんな働き方でしょうか。

時短勤務とは、1日の労働時間を原則6時間として通常より短くする働き方を指します。会社によっては、30分単位での勤務時間の変更や7時間の時短勤務など、より柔軟な運用もできます。また、正社員でも時短勤務が可能です。

時短勤務が注目される背景には、慢性的な人材不足があります。意欲や能力が十分ありながら、子育てや介護などが原因で、長時間勤務できない人材は珍しくありません。しかし、時短勤務のような多様な働き方を整備することで、能力のある人材が働けるチャンスを増やせるのです。

例えばフルタイムでの働き方が、午前9時からが始業で午後6時に終業(休憩1時間)する場合、計8時間労働になります。一方時短勤務であれば、例えば午前9時に始業して午後4時に終業とでき、休憩1時間で6時間労働が可能です。

なお、休憩時間については、6時間以上8時間未満の労働時間の場合、労働基準法に従い45分の休憩が必要と定められています。

時短勤務が広がる背景

日本においては、「育児休業法(現・育児・介護休業法)」が平成3年に制定され、平成4年4月から施行されました。これにより、現代は男女とも育児休業を取得できます。これにより、女性雇用や誰もが働きやすい環境、さらには優秀な人材確保や生産性の向上を図っているのです。

また、令和3年(2021年)6月には育児・介護休業法が改正され、令和4年(2022年)4月から段階的に施行されています。

▼育児・介護休業法令和3年(2021年)の改正事項

施行時期 改正事項
令和3年(2021年)4月1日 個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置の義務化
有期雇用従業員の育児・介護休業取得要件の緩和
令和3年(2021年)10月1日 出生育児休業(通称「産後パパ育休」)の創設
育児休業の分割取得
令和5年(2023年)4月1日 育児休業取得状況の公表の義務化

参考:厚生労働省「育児・介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説

時短勤務で使える残業免除申請

時短勤務でも残業をしなければならないこともあるのか、不安を感じている方もいるかもしれません。これについては、休暇の取得理由が育児か介護かによって、条件が異なります。ただし、残業免除の申請をしていれば残業は強制されないため、幼稚園のお迎えなどで残業できない場合に制度を活用できます。

時短勤務であっても残業命令自体は違法ではありませんが、残業免除の申請をしていれば残業は強制されません。事情に応じて活用を検討しましょう。

家族時間

時短勤務の対象

時短勤務は、誰にでも使用できるわけではありません。本章では、時短勤務の対象を2パターンに分けて解説します。

育休明けの場合

短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)(法第23号)により、対象者の従業員は男女ともに育休明けに時短勤務制度を利用できます。

▼短時間勤務制度の対象となる従業員
  • 3歳未満の子どもを育てる従業員であること。
  • 短時間勤務をする期間に育児休業をしていないこと。
  • 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと。
  • 労使協定(以下参照)により適用除外とされた従業員ではないこと。
    ◦雇用期間が1年に満たない従業員  
    ◦1週間の所定労働日数が2日以下の従業員  
    ◦業務の性質や実施体制上、短時間勤務が困難である業務に従事する従業員(代替措置あり)

対象の従業員は、子どもが3歳に満たない間(3歳の誕生日の前日まで)時短勤務制度を利用できます。ただし、企業によっては、より長い期間、時短勤務制度を活用できるとしているケースもあります。

例えば、トヨタ自動車は以前、正社員の場合は子どもが小学4年生まで、あるいはパートタイムなどの非正規従業員は子どもが3歳までは時短勤務を認めていました。また、2023年4月からはさらに時短勤務対象者を増やし、子どもが18歳になるまでの従業員を対象としています。

介護の場合

短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)(法第23号第3項)により、原則として要介護状態の家族を介護する全ての男女従業員は、時短勤務制度を利用できます。ただし、勤続年数1年未満の従業員など、一部対象外のケースもあることに注意してください。

ここで、「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態を指します。また、「対象家族」とは、基本的には配偶者、父母及び子、配偶者の父母を意味します。

介護の場合、時短勤務に加え、時差出勤や介護サービスへの助成金なども認められています。例えば、要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業をした日数と合わせて少なくとも93日間は介護休業を利用できます。

また、介護対象家族1人に付き3年間で合計2回までの範囲で、短時間勤務制度を利用できるよう定められています。

時短勤務を申請する流れを整理

時短勤務を行いたい場合は、以下の流れで申請します。

  1. 時短勤務の対象になるかを勤務先の就業規則で確認
  2. 時短勤務を開始したい日よりも約1~2ヶ月前に人事担当者に相談
  3. 勤務先から「短時間勤務申請書」(育児短時間勤務申出書・介護短時間勤務申出書)を受け取り、希望する勤務時間、開始日、期間などを記入
  4. 勤務先より「短時間勤務取扱通知書」を取得
  5. 社内への復帰日、勤務時間などを周知。休業中の場合、人事に依頼

work life balance

時短勤務のメリット

時短勤務のメリットは、大きく分けて以下の2つです。

育児や介護と仕事を両立できる

時短勤務を活用することで、育児や介護が可能な時間が増え、ワークライフバランスをとりやすくなるメリットがあります。例えば、1日8時間勤務だった時間が6時間となることで、その2時間で子どもの送迎や家族の介護ができるだけでなく、自分の時間にもゆとりができます。

育児や介護によってフルタイム勤務が難しくても、短時間勤務であれば身体とメンタル双方のバランスが取れ、安定して勤務できる方もいるでしょう。

キャリアを継続できる

時短勤務を活用することで、子育てや介護があってもキャリアを中断させることなく、継続的に仕事に従事できることもメリットです。

子育てや介護と仕事との両立が難しくなり退職やパート勤務に移行しようかと考える方もいるかもしれません。しかし、時短勤務により、社員のままで勤務を継続できる可能性が広がりました。

このことは、子育てや介護を考えなければならないものの、長期的に職業面で成長したいとも考える方には、見逃せないメリットではないでしょうか。

時短勤務のデメリット

時短勤務にはメリットもありますが、留意したい点もいくつかあります。

給与が減る

業務時間が短縮される分、基本的には給与が減額されることを前提に考えておきましょう。時短勤務を理由に不当な扱いをすることは許されませんが、労働時間に応じた給与の削減は、適正な範囲内であれば特に禁止されていません。

職場内の人間関係で悩むことも

時短勤務が要因で、職場内の他の従業員との間に溝が生じることがあります。例えば、ある従業員が時短勤務をした結果、他の従業員の負担が増加したため、他の従業員の不満がたまることもあるかもしれません。

また、早く退社することや、他の従業員とのコミュニケーションが少なくなることで、時短勤務者が社内で孤立することも考えられます。

キャリアに影響する可能性

育児休暇は男女ともに取得可能ですが、女性の方が取得することが多いのが現状です。実際に、令和4年度雇用均等基本調査によると、育児休業取得率は女性は80.2%、男性は17.13%という調査結果が発表されています。

注意しなければならないことは、時短勤務者はフルタイム勤務に比べて業務時間が限られる分、昇進や昇格に影響が出るケースがあることです。

特に女性の場合、出産後に時短勤務を行うことで、マミートラック問題に直面することもあると言われています。マミートラック問題とは、休業していた女性従業員が復帰した際、担当業務や勤務時間などが変更されることが影響し、キャリア形成が阻害されることです。

また、もし転職を希望していて、転職先の企業で時短勤務をしたいと考えていても、入社後すぐでは時短勤務が困難な場合もあります。不安な場合は、採用面接時に確認しておくとよいでしょう。

オンラインインタビュー 面談 面接

時短勤務以外に仕事と家庭を両立するために役立つ制度

育児や介護と両立するために役立つ制度は、時短勤務だけではありません。

その中でも代表的な3つの働き方を解説します。

制度名 メリット 注意点
フレックスタイム制度 ライフスタイルや家庭環境に合わせて、柔軟に時間配分し働ける 自己管理がうまくいかないと、生産性が大きく低下する恐れもある
外部とのやり取りが必要が多い場合、相手先と時間が合わないとトラブルの原因になりかねない
在宅勤務(リモートワーク) 通勤時間がかからないため、仕事と家庭のための時間をスムーズに切り替えて時間を有効活用できる セキュリティ対策が必須
  家族の近くで働くことができるため、家族に急な体調変化が起こった場合もすぐ対応できる コミュニケーション不足により、業務進行に支障が出ることもある
時間単位有給休暇 通院や役所の手続き、家庭の用事など、丸一日休むまでではない理由でも休みやすくなる 時間単位の有給休暇は、5日間の有給休暇取得義務のうちにはカウントされない

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度とは、従業員が自分で勤務時間を決められる制度で、総労働時間の範囲内で日々の始業・終業時刻や働く時間を調整できます。ライフスタイルや家庭環境に合わせて、柔軟に働く時間を調整することで、育児・介護の都合に合わせることが可能です。

ただ、自己管理がうまくいかないと生産性が大きく低下する可能性もあります。また、フレックス勤務の時間帯と顧客からコンタクトがある時間が合わず、急ぎの対応にできないこともあるかもしれません。

在宅勤務(リモートワーク)

在宅勤務(リモートワーク)は、インターネットを通じて遠隔で仕事を行える働き方です。

現在多くの企業が採用しており、在宅勤務は通勤時間がかからない分、仕事と家事を両立するための時間を確保できます。また、自宅で業務を行えるため、家族に急な体調変化が起こった場合もすぐ対応できることもメリットです。

現に、厚生労働省のアンケート調査結果によると、リモートワークを活用している多くの方がその効果を実感しています。

  • テレワークの利用により、短時間勤務からフルタイム勤務へスムーズに移行できます。育休前と同じスキルを活かした仕事で充実感を実感しています。
  • テレワーク制度が転職の決め手の1つに。往復2時間の通勤時間の短縮で、仕事や子どもとの時間が充実します。
  • テレワークと地域の子育てサポートで、仕事や育児だけでなく、子どもの小学校受験のための教室通いもスムーズにできます。
  • 『小学校 3 年生までの子どもを持つ従業員はテレワークの登録申請を』という組織長の呼びかけで登録しました。試しに利用してはじめて仕事と育児の双方でのメリットを実感しました。
  • 週1.5 回のテレワークで通勤時間を大幅に削減。母親の介護の充実だけでなく、家族と過ごす時間、自分の時間、睡眠時間を確保できます。

参考:厚生労働省「テレワーク活用事例 -仕事と育児・介護の両立のために?

時間単位有給休暇

時間単位有給休暇とは、柔軟に休暇を取得できることを目的として、1時間単位で有給休暇が取れる制度です。5日間の日単位の有給休暇に加えて、5日間以内で時間単位の有給休暇を取得できます。

通院や役所の手続きや家庭の用事など、丸1日休むほどではない理由で休みを取りたい場合でも、有給休暇を使いやすいことがメリットです。

法律により、有給休暇付与日数が10日以上の全ての従業員は、年次有給休暇を5日間取得する義務がありますが、時間単位の有給休暇はその5日間の期間にカウントされません。

まとめ|時短勤務は家庭と仕事を両立しやすいが高収入や仕事への高評価にはつながりにくい

本記事では時短勤務の概念やメリット・デメリット、時短勤務以外に仕事と家庭を両立するために役立つ制度を紹介しました。

時短勤務の対象者は「3歳未満の子ども」や「要介護の家族」がいる従業員で、活用することで原則として1日の労働時間を6時間に短縮できます。

時短勤務制度は、育児や介護と仕事を両立できる点と、キャリアを維持しやすいことがメリットです。一方、時短勤務を活用することで収入が減ることや、職場での立ち位置や仕事への評価に影響を及ぼす恐れがあることに留意する必要があります。

また時短勤務以外にも、フレックスタイム制度やリモートワークなど、育児や介護と両立するために役立つ制度が存在します。自社で活用できる制度があれば、仕事と家庭を両立するために、活用を検討してはいかがでしょうか。

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調査については「主婦が損をしない働き方とは?在宅ワークの実態を調査!」をご覧ください。

Q2.時短勤務のメリットは?

時短勤務のメリット時短勤務のメリットは、「育児や介護と仕事を両立できる」「キャリアを継続できる」の2つです。

例えば、1日8時間勤務だった時間が6時間となることで、その2時間で子どもの送迎や家族の介護ができるだけでなく、自分の時間にもゆとりができます。また、社員のままで勤務を継続できる可能性もあります。子育てや介護を考えなければならないものの、長期的に職業面で成長したいと考える方にとって大きなメリットとなるでしょう。

詳しくは「時短勤務のメリット」の章をご覧ください。

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