働き方が多様化する中で、「フリーランスとして独立して働けないか」と考える人もいるでしょう。フリーランスとは組織に属さず個人として仕事を得て働くことです。個人のスキルを活かし、働くことができますが、自分のできる仕事があるのだろうかと考える人もいると思われます。
本記事では特別なスキルや専門知識がなくても、フリーランスとして独立しやすいおすすめの職種、実際にフリーランスになるまでの流れなどについて紹介します。
フリーランスの定義
フリーランスとは組織や団体に属さず、業務・プロジェクトごとに自由に契約を結び仕事を受けて働く人のことを指します。いわゆる会社員とは異なり、特定企業に雇われるのではなく、自分自身の力で案件を獲得し、専門スキルなどを活用して法人顧客や一般のお客様から仕事を受けます。働き方や仕事の進め方に自由が生まれますが、確定申告など税金や保険の手続きを自分自身で行う必要があります。
美容師やネイリスト、フォトグラファー、プログラマーやデザイナー、ライターなど、さまざまな分野でフリーランスの人が活躍しています。
おすすめの職種
それではフリーランスとして働くことができる職種を紹介しましょう。
未経験・スキルなしでもできる職種
ライター | 書籍やwebメディアに掲載される記事制作。初心者の方でも比較的始めやすい。 |
ブロガー・アフィリエイター | ブログを運営し、商品の使用感やおすすめポイントを発信するなど、興味深いコンテンツを提供する。 アフィリエイトプログラムを通じて企業の商品やサービスページへ誘導することで企業から収益を得る。 |
事務スタッフ | オフィス業務をリモートで支援。データ入力、スケジュール管理、文書作成などのタスクを効率的に処理する能力が求められる。 |
在宅コールセンター | 自宅で電話やオンラインチャットを通じて顧客の問い合わせやサポートを行う。コミュニケーションスキルが重要で、リモート環境で効果的な解決策を提供する。 |
高度なスキルが求められる職種
ここにあげる職種は高度なスキルが求められるため、専門知識の習得が予め必要です。
Webデザイナー | webサイトやアプリの見た目と使いやすさをデザイン。美しいwebサイトのデザインを考え、ユーザーエクスペリエンスを向上させる。 【求められるスキル】 プログラミングスキル マーケティングスキル イメージ編集ソフト(Photoshop、Illustrator)の操作スキル |
Webライター | ウェブに掲載するコンテンツのライティングを担う。SEOを意識したキーワード選定や情報の正確性が求められる。 【求められるスキル】 ライティングスキル SEOに対する知見 調査・情報収集力 クリエイティブな表現力 |
イラストレーター | アートでストーリーやコンセプトを表現。グラフィックやイラストを通じて、メッセージやアイデアを伝える。 【求められるスキル】 アートやデザインのスキル グラフィックソフトの使用(Illustrator、Photoshop) クライアントの要望の理解 クリエイティブな発想力 |
Webプログラマー | ウェブページやアプリの開発。フロントエンドではデザイン実装、バックエンドでは機能作成とデータ管理を担当。 【求められるスキル】 プログラミング言語(HTML、CSS、JavaScriptなど) フロントエンドとバックエンドの知識 ウェブ開発フレームワークの理解 データベース管理の基礎知識 |
動画編集・制作 | 動画制作を通じてエンターテイメントや教育などの情報を発信する。視聴者とのコミュニケーションを深め、広告収益やスポンサーシップを収益とする。 |
フリーランスになる前に知っておきたいこと
自由で働きやすそうなフリーランスですが、メリット・デメリットが存在します。
実際にフリーランスとして独立する前に、どんな観点に注意しなければいけないのか知り、自分の働き方として向いているか検討することが大切です。
メリット
【柔軟なスケジュールとワークライフバランス】
フリーランスは自分でスケジュールを調整し、稼働時間や休暇を柔軟に設定することができます。例えば特定の週のみ週休3日にしたり、あえて週休1日にしたりすることもできるでしょう。家庭や個人の予定に合わせて働くことができるので、裁量次第では、企業に属するよりもワークライフバランスを実現することが可能です。
【自身の専門性を最大限に活かせる】
企業に所属していると、組織の事情によってあなたの配属先や仕事が決まることがあります。一方、フリーランスであれば、自分の得意分野やスキルを活かして主体的に仕事を選ぶことができます。専門知識やスキルが最大限に発揮され、その領域において実績が上がれば評判も高まるでしょう。
【収入の伸び幅と案件の多様性】
フリーランスは自分の選択によってさまざまなプロジェクトに携わることが可能です。複数のプロジェクトに関われば、収入源そのものが増えます。また、仕事を受ける単価も自分自身で設定できます。実績に応じて単価を上げていけば、どんどん収入を上げていくことができます。稼働時間やプロジェクト数といった働き方次第では、さらに収入アップも期待できるでしょう。
デメリット
【収入の不安定さ】
フリーランスは自由に仕事を選べますが、その半面、案件の受注状況や稼働数によっては収入が大きく変動する可能性があります。収入が安定しないと、予期せぬ支出や生活費の調整が難しくなることも考えられるので気をつけなければなりません。
【社会保障の不足】
企業に雇われる従業員として働く場合は、雇用主が健康保険や年金などの社会保障を提供することが一般的です。フリーランスとして独立すると、これらは自分で手配する必要があります。保険料の支払いや年金の計画を自分自身で責任持って考える必要があります。
【セルフマネジメントの必要】
フリーランスは自分でスケジュールを管理し、クライアントとの交渉やプロジェクトの進行管理を行います。限られた時間のなかで効果を上げていくためには、プロジェクト状況に応じてタスクの優先順位を付けるなど、セルフマネジメントにおける高いスキルが求められます。
収入
「フリーランス白書2023」によると、アンケート回答者(副業・すきまワーカーを含む)の現在の年収は、「200-400万円未満」がもっとも多く約3割で、「200万円未満」「400-600万円未満」が約2割ずつであることがわかります。
上位5職種の現在の年収を分析すると、エンジニア・技術開発系とコンサルティング系はいずれも約8割が「400万円以上」でした。一方、クリエイティブ・Web・フォト系における「年収400万円以上」の割合は約5割、通訳翻訳系と出版・メディア系における「年収400万円以上」の割合は約4割にとどまりました。
職種によって、フリーランスの収入にはバラツキがあるようです。
引用:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 「フリーランス白書2023」
各種税金や保険に関する対応
フリーランスは税金、保険、年金などの手続きをすべて自分で行う必要があります。具体的には下記のような税金や保険料を納める必要があります。
税金 | ・所得税 ・住民税 ・個人事業税 ・消費税 |
保険 | ・国民健康保険 ・介護保険 |
所得税は勤め先からもらう給料や、フリーランスとして働いて稼いだ1年間の収入に対してかかる税金です。個人が手にした1年間の収入から、必要経費などにあたる額を差し引いた残りの金額が「所得」です。
家族構成など、本人を取り巻く状況などに応じてこの所得から、一定の控除額が差し引かれます。また、累進課税と言われますが、こうした控除後の所得が高い部分ほど、適用される税率は高くなる仕組みになっています。
課税される所得(1,000円未満切り捨て) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円まで | 0.05 | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 0.1 | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 0.2 | 24万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 0.23 | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 0.33 | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 0.4 | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 0.45 | 479万6,000円 |
住民税は住所地に支払う税金のことです。都道府県民税、市区町村民税をまとめて住民税といいます。住んでいる地域によって納税額は異なります。お住まいの各自治体のホームページを参考にしましょう。
個人事業税個人事業税とは、フリーランスや個人事業主が、都道府県に対して納める地方税のことです。年間の事業所得が290万円を超える場合に納税する必要が発生します。また、業種によって税率が異なります。一般的には35%ですが、課税対象にならない場合もあるので注意しましょう。
消費税消費税とは、商品・製品の取引に対して課税される税です。令和5年9月末までは前々年度の課税売上が1,000万円以上の場合に発生します。
令和5年10月より、インボイス制度が適応されます。小規模事業者やフリーランスとして働く人たちは、必要になる手続きをしっかり確認しておきましょう。
国民健康保険は被用者保険や後期高齢者医療制度などの医療保険制度に加入していないすべての住民が対象になります。個人事業主は国民健康保険に加入しなければなりません。
介護保険介護保険とは社会全体で介護を支えることを目的に創設された公的保険制度です。働き方に関わらず40歳以上の方は加入しなければなりません。
フリーランスになるまでの流れ
1.仕事を探す
フリーランス協会によると、仕事の獲得経路は下記が挙げられます。特に人脈から仕事獲得に繋がることが多いため、SNSやイベントを活用して人脈を増やしていくことが大切です。
引用:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 「フリーランス白書2023」
SNSの活用SNSやLinkedInなどのプロフェッショナルネットワーキングサイトを活用してセルフブランディングを行い、業界における自分の知名度を高めることでも、案件獲得につながります。
業界イベントやセミナーへの参加セミナーやカンファレンスなどの業界イベントに参加しましょう。他のフリーランサーやプロフェッショナルと出会い、交流する機会を増やしましょう。
オンラインコミュニティへの参加関連する業界のオンラインコミュニティに参加し、知識や事例を共有し、ノウハウを深めたり、さまざまな専門家とつながる機会を作りましょう。
過去の取引先から仕事をもらう過去の取引先から仕事をもらうために意識しておくべきことが3つあります。
【継続的なコミュニケーション】
定期的にメールや電話で連絡を取りましょう。進行中のプロジェクトの進捗状況や新たなアイデアを共有して現在の関係を維持しながら、次の提案機会を探ります。
【クライアントの目標に合わせたアプローチ】
クライアントのビジョンや目標をヒアリングしましょう。理想の実現に向けて、新たな提案を提示することで次の提案機会を得ることができます。
【リピートビジネスの提案】
プロジェクトが成功して完了した際には、関連する新たなプロジェクトの提案を行い、次につなげましょう。
自分の専門性や実績をウェブサイトに掲載しましょう。そうしたポートフォリオの公開が案件相談の窓口となったり、何らかの案件へ応募する際のアピールとして活用したりすることができます。
エージェントサービスの利用エージェントサービスを利用することで、フリーランスとしての仕事紹介や、ビジネスの成長をサポートしてもらうことができます。スキルや実績を登録しておけば、適切な案件を紹介されることがあります。エージェントサービスの登録・活用を検討してみましょう。
おすすめのエージェントサービスは以下の2つが挙げられます。
【クラウドワークス】
クラウドワークスは2011年に設立された株式会社クラウドワークスが運営しているクラウドソーシングサービスです。業界大手であるため安心して仕事の受注ができます。
また、案件は250種類以上あります。業界や職種問わず、また、未経験から専門知識が必要な案件まで多様な案件を見つけることができます。
【ランサーズ】
ランサーズは2008年に設立された国内最大手クラウドソーシングサービスです。こちらも最大手であり、安心して仕事を受けることができます。
未経験者でも受けられる案件が豊富で、認定ランサー制度というものが存在します。認定ランサーに認められると、継続して案件を受注できる可能性が高まります。収入の安定も見込めるでしょう。
2.必要手続きを進める
フリーランスになるために必要な手続きを進めましょう。次のリストに沿って、手続きに漏れがないように気をつけましょう。
開業届を提出する | |
確定申告の申請(青色申告承認申請書を提出する) | |
国民年金へ切り替える | |
健康保険の手続きをする | |
個人事業主用の銀行口座を開設する(任意) | |
事業用のクレジットカードを用意する(任意) | |
税理士と顧問契約を結ぶもしくは会計ソフトを準備する(任意) | |
領収書やレシートを保管しておく |
開業届とは、開業する際に税務署に届け出る書類のことです。提出の義務はありませんが、提出することで青色申告を選択できたり、事業主としての証明になったりするため提出するのが無難でしょう。
各種書類を準備する仕事をする上で下記の必要書類をあらかじめ準備しておきましょう。
- 請求書、見積書
- 青色申告承認申請書
- 銀行口座の開設、クレジットカードの用意
フリーランスとして成功するためには
フリーランスとしてビジネスを成功させるために、以下の4つのことに注意しましょう。
タイムマネジメントと効率性
スケジュール管理を徹底しましょう。スケジュール管理ができないと、自分のタスクが把握できず、納期遅延などのトラブルにつながります。そして作業は効率的に進めましょう。何にどれくらいの時間を費やしているか意識し、定型業務は効率化するなど、生産性の高さが求められます。
仕事とプライベートのバランス
フリーランスは、自分次第で働き方がデザインできます。仕事量を調節して家族との時間を充実させたり、実績を残すために仕事に集中したり、オンとオフのバランスに気をつけながら理想の働き方を実現させましょう。
クライアントとのコミュニケーションは丁寧に
クライアントとコミュニケーションをとる場面は多々あります。クライアントと円滑にコミュニケーションをしていかないと、プロジェクトの成否に影響が出たり、進捗状況が不透明になってしまう可能性もあります。
定期的に報告書や会議などを通じて意思疎通を図りつつ、フィードバックには真摯に対応し、柔軟な姿勢を見せることが大切です。
ポートフォリオを作成する
エンジニアやデザイナーなどを行うフリーランスの場合、自身の実績やスキルの証明となるポートフォリオを作成するとよいでしょう。会社員とは違い、フリーランスは自身で案件を獲得していかなければなりません。企業側からしても、どんなことが出来る人なのかが見えない人には仕事を依頼しづらいでしょう。
案件獲得にむけたアピール材料を増やすためにも、ポートフォリオの作成は重要です。
まとめ|未経験でもフリーランスになることができる
スキルや経験の深さによらず、企業に属さずフリーランスとして働くことができます。人脈づくりや自分の得意分野・興味関心に合わせて、最適な仕事を見つけましょう。
よくある質問
Q1.未経験でもフリーランスを始めやすい業種はありますか。
未経験でも始めやすい仕事は、例えばライターやブロガー、事務スタッフが挙げられます。詳しくは「おすすめの職種」の章をご覧ください。
Q2.フリーランスを始めるために必要なことは何ですか。
フリーランスを始めるには、まずは仕事を探すことから始めましょう。また、仕事探しとあわせて書類の準備や開業届の提出など、手続きも着実に進めることが大切です。
詳しくは「フリーランスになるまでの流れ」の章をご覧ください。